インターシステムズが
開催・参加したイベント
インターシステムズ米国先進医療IT視察ツアー 2007 in Boston (2)
2日目…7月24日(火)ベス・イスラエル・ディコネス・メディカルセンターおよび
退役軍人省病院視察
時差ぼけのせいで夜中に目が覚めた。宿泊先のハイアット・リージェンシーはボストンとケンブリッジの間に流れるチャールズ川沿いのケンブリッジ側に建つ古き良き時代の雰囲気と都会の洗練された印象を併せ持つホテルだ。窓の下にはチャールズ川とボストン市街の夜景が広がる。やがて夜が明けるとまだ早朝にもかかわらず川沿いの小道をジョギングする人たちが眼下を行き交い、さらには河畔を優雅にすべるように流れる何艘ものボートが往来する。
2日目の最初の訪問先であるベス・イスラエル・ディコネス・メディカルセンター(BIDMC)は、ともにハーバード大学の教育病院であったベス・イスラエル病院(495床)と隣接ブロックにあったディコネス総合病院(297床)が1996年に合併して誕生した。どちらも古い歴史と高い医療レベルを誇る病院だったが、生き残るためにはお互いに統合の道を選ぶ必要があったようだ。
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BIDMCの救命救急センター(ER)で稼働中のER管理システム「EDダッシュボード」を見せてもらった。メイン画面は大型液晶パネルに映し出されたERのベッドごとの稼働状況をリアルタイムに反映する管理画面だ。入室からの時間、各種検査の進捗状況、診断結果、転帰など刻一刻と変化するERの状況が逐次更新表示される。当システムは元々、BIDMCの医師を中心とする医療スタッフが作り上げた自作システムであり、現在はForerun社が販売サポートを行っており、これから全国展開を行うらしい。基本コンセプトは従来、ERでホワイトボードにマジックで殴り書きされてきた情報を整理して迅速な共有化を図り、意思決定支援や医療ミス防止に役立てることだ。現場での使いやすさの秘訣はおそらく現場をよく知る救急に携わる医療者自らがシステム作成を行ったからであろう。その意味では、私が名古屋大学医学部附属病院で進めているFileMaker Proによる医療者自作システムと相通ずる点がある。
このようなリアルタイム表示システムにおいて重要なことは、異なるシステム、異なるモダリティーから飛んでくる情報をいかに整理して迅速に取り込むかに尽きるが、その秘密はCachéやEnsembleのデータハンドリング性能に拠るのであろう。見ている限りでは定期的にリフレッシュされる画面表示の速度にも全く問題なく、何らストレスは感じなかった。医師や看護師の記録の部分はどうなっているのか疑問に思っていたところ、隣にいた熊本大学医療情報部の宇宿教授が即座に質問してくださった。現在のところはまだ、手書きのシートに書かれた情報を事後入力という形を取っているが、近々、PDA(携帯情報端末)による直接入力を予定しているらしい。
医師としての私の興味はTV番組などでしか知らなかったERの現場を生で体験できることにあったが、訪れた時間が午前中の早い時間帯であったせいか、実際、思ったほどの緊迫感はなく、むしろ私のよく知る日本の救急現場のほうが慌しさでは一歩も二歩も上である。TV番組の「ER」は当然忙しい場面ばかりを演じているのであり、カーター先生だってのんびりしている時間も必要だろう。ただ、救急スタッフの数を見ていると、やはり日米の医療環境の差は否めず、日本の救急医療がいかに少ないマンパワーで頑張っているかが実感された。医療機器や設備に関しては何ら目を惹くものはなかった。
ひととおり見学を終えた後、案内してくれたERの医師でもあり情報システム担当でもあるラリー・ナザンソン先生と話した。実は、彼がこのシステムを作った中心人物だったのだ。そこで私も自分自身医師であり、自作の医療情報システムを作っていると告げると、「あなたもCachéで作るのか?」と聞かれた。私は「FileMaker Proという市販データベースソフトで作っている」と答えたが、彼はまったく知らないようだった。ちなみに今回のツアーで訪れた先で誰に尋ねても知っている人は皆無だった。向こうでは日本の医療現場ほどにはFileMaker Proは普及していないようだ。
BIDMCの玄関およびいたるところに、赤い靴下のロゴと「Official Hospital of the Boston Redsox」の文字が掲示されていた。レッドソックス球団が寄付でもしているのかと思いきや、実際は逆のようで病院が使用料を払って宣伝に使わせてもらっているらしい。それほどボストンではレッドソックス球団のブランド力は強いようだ。ちなみにこの日の夜に行われた試合では、Dice-K(松坂)が7回無失点と好投し、岡島が見事なリリーフでレッドソックスが勝利した。
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午後からは、郊外にある退役軍人省病院(Edith Nurse Rogers Memorial Veterans Hospital)を訪れた。こちらでは、VistA(The Veterans Health Information Systems and Technology Architecture)というシステムがCachéを用いたWebベースで動いていた。全米で約15万の同時アクセスを誇り、快適なレスポンスを維持していることは驚嘆に値するが、私が気になったのは、「VistA」というネーミングだ。Microsoftの新OSとまさにかぶっているが問題はないのだろうか。
もう一つ、米国らしいと思ったことがある。患者情報画面で「Allergy」「Infectious disease」というチェック項目の並びに「MST」という項目があった。NSTなら日本でも知名度上昇中のNutrition Support Teamだが、MSTは聞いたことがない。担当者に尋ねてみるとMilitary Sexual Trauma(軍隊での性的トラウマ)の略で、男女を問わず頻繁に生じる問題とのことだ。米国社会の影の部分を見たような気がした。
IT視察ツアー2007 (2) |



