インターシステムズが
開催・参加したイベント

吉田 茂氏

インターシステムズ米国先進医療
IT視察ツアー 2007 in Boston (1)

名古屋大学医学部附属病院医療経営管理部 吉田 茂


プロローグ

 多次元データベース「Caché(キャシエ)」で知られるインターシステムズ主催の米国先進医療IT視察ツアーが今年も7月22日から28日の日程で開催された。

 私自身は昨年に続いて2度目の参加だが、ツアーそのものはすでに数回開催されている。昨年は、名古屋大学医学部附属病院の医療情報システムのリプレースを翌年に控え、データベースエンジンをオラクルからキャシエに変更することの是非を確かめる意味で、本場米国でのキャシエの利用実態を視察するのが目的だった。今回は、システムリプレースを無事に終え、キャシエのハイパフォーマンスのおかげでレスポンスが3倍速になり安定性も格段に増した電子カルテに安心して、余裕を持って米国最新IT事情を視察できることになった。システムの安定性の証明の一つとして、ツアーにはベンダー側の現場責任者である富士通SEの沼澤氏も同行することとなった。もし不安の多いシステムだったら情報管理室長の私と沼澤氏が同時に1週間も海外出張するなど考えられないことだ。

7月22日(日)、インターシステムズジャパンの小田氏、上中氏と合計4人が同じANA機でシカゴ経由ボストン入りした。シカゴまでは約12時間のロングフライトだったが、機内で私の隣にいたシンガポール人の母娘は、成田乗り継ぎでなんと24時間かけてシンガポールからシカゴの大学に留学する娘のためにやってきたそうだ。私のボストンでの滞在予定が5泊だと聞いたその母親は「Unbelievable!」という顔つきだったが、私は一応「Because Japanese doctors are very busy!」と言っておいて、この超過密日程で時差ぼけを克服する間もなく、これから多数の訪問先でより多くの貴重な情報を得るべく決意を新たにした。


ツアー初日…7月23日(月)インターシステムズ本社訪問

 ケンブリッジのOne Memorial Drive にあるインターシステムズ本社を訪れた。昨年同様、入り口で顔写真つきのID提示を求められる厳重警備であった。

 戦略立案担当副社長のポール・グラッブシード氏から「Key Trends in Connected Healthcare」というタイトルで、米国における医療事情および同社の医療ITに関わる基本姿勢を伺ったあと、ディスカッションを行った。

 米国においても医療コスト削減は一番の関心事だそうだが、日本との医療経済制度の大きな違いから興味深い議論ができた。現在、米国の総医療費はGDP(国内総生産)の16%に達しているらしい。わが国の場合はGDPの8%で、政府による医療費抑制策が声高に叫ばれているわけだが、米国では異なる論調であった。つまり、彼らはGDPの16%という数字を医療およびヘルスケア産業の市場規模と捉えているのだ。しかも右肩上がりで上昇しているこの数字を市場拡大傾向として歓迎しているようにも思える。もっとも同氏は、現状のような経済成長率の2〜3倍の上昇スピードではなく、経済成長率と同程度の医療費の増加が望ましいと語っていた。

 ただ一方では、総医療費に占める政府の負担は3分の1程度であり、民間の保険会社が大部分を賄っている米国においては、政府よりもむしろ社員の福利厚生費として負担を強いられる企業のほうに問題意識が大きいようである。実際、大企業(インテル・GE・マイクロソフト)などが政界に対して医療費削減のアプローチをしていると同氏は語る。

 もうひとつ興味深い話は、マサチューセッツ州で今年7月より、全米初の国民皆保険制度がスタートしたということである。しかし、よく聞いてみると、これは政府主導ではなく民間保険会社主導であり、各社様々なプランが存在する商品としての医療保険のいずれかを同州の住民は必ず購入しなければならないという法律ができたというだけのことらしい。同氏によると、自動車を保有している人はみな賠償保険に加入しないといけないのと同じことであり、しかるべき猶予期間を置いた後には、保険未加入に対する罰則も制定されるようである。果たしてこういった形での国民皆保険制度がうまく機能するのかどうか今後の成り行きを見守りたい。

ポール・グラッブシード

 質疑応答の中で、連邦政府が推進する全米医療ITインフラ構想NHIN(National Health Information Network)につき尋ねてみたが、地域の医療情報化を担うRHIO(Regional Health Information Organization)の直面する課題は大きく、ほとんどの地域のRHIOはうまく機能していないそうだ。誰がコストを負担し、誰がベネフィットを得るかのバランスが悪いからだという。根本的に、医療ITインフラを道路などの公共インフラと同じように考えて、積極的に政府主導で行うべきであるとグラッブシード氏は力説した。

 もっとCachéやEnsembleなど同社の製品に関する話があるのかと思ったが、意外とその辺りはさらりと流した印象だった。むしろ製品に関しては、このあとに続く医療機関視察で実際に現場を見て評価してもらおうという姿勢を感じた。明日以降が楽しみである。

 この日の夕食はボストン市内のタパス料理の店で取った。タパスとは、スペイン語でおつまみという意味だそうで、日本の小料理屋といったところか。通訳の真木さんによると東京でもブームになりつつあるそうだ。ちなみにこの真木さんの通訳は絶品である。現地の医療事情をよく理解し、IT一般にも精通しているため無駄のない的確な言葉でまとめてくれるのだ。また、ボストンに長く住んでおり観光ガイドとしても十分やっていけるくらいの博識ぶりである。真木さんのおかげでこのIT視察ツアーが実りあるものになったといっても過言ではない。この場を借りて真木さんには御礼を言わせていただきたい。


IT視察ツアー2007 (1)

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